2009年12月27日日曜日

賞状とハート

 昨日の朝の食卓、愚息が「そうだ、あれどうしたっけ!」と突然叫ぶ。
 「何のことだ」「あれだよ、ボクの賞状、昨日もらってきたやつ」
 「なにソレ、そんなこと昨日なにも言ってなかったじゃないか」妻と僕と同時にこたえる。

 夏休みの研究発表が評価されたとのことで、市の教育委員会のナントカカントカという部門で表彰されたという。その賞状を冬休み前の朝会で校長先生から手渡されたとのこと。

 「お前、そういうことなんで早く言わないんだ、それで賞状まで無くなっちゃたって、いったい何やってんの?」
 「だって、帰ってきたとき誰もいなかったし、あとはそのこと忘れちゃって、、、ああ、どこにやっちゃったんだろ?」頭をかかえる愚息。

 立派な賞状をもらえてとても嬉しかったという。でも、ソレをどこかに置き忘れてしまったらしい。
 「ほんと、お前はアホだなあ」と僕。うなだれる愚息。

 本来なら、"よかったねえ" "うん、頑張ってよかった"みたいな、にこやかな会話が飛び交うあたたかなクリスマスの夕餉、という時間を持てたはずなのに、結局、逆に叱られている愚息。怒っているこちらも、とてもむなしい。

 そんな大事なもの普通忘れるかねえ、と思ってみて我が身を振り返れば、思い返されること、それは小学一年生の登校初日の話。
 大きなランドセルに真新しい国語算数理科社会、すべての科目の教科書・ノートを詰め込んで、母に「がんばってね」かなんか言われつつ学校へ。
 午後、元気よく帰宅。母に「どうだった学校? 楽しかった?」と聞かれ、ひとこと「普通」とこたえる僕(わが愚息と一緒)。
 そして、ランドセルの中を見て母親がびっくり。「あらやだ、中身がからっぽじゃない」

 往きは中身ぎっしり、帰りはからっぽのランドセルを背負って帰ってきた息子に「あんた、教科書とか筆箱は?」と問いただす。息子は、ぼんやり「あ、忘れた」 ...
 それを聞くや否やランドセルを手に、全速力で学校へ向かって走り出していった母親。放課後の1年2組の教室。ぽつりと担任の先生が教壇に座っていた。
 「ああ、〇〇君のお母さん。いらっしゃると思っていましたよ。〇〇君、教科書全部机の中に入れたまま帰っちゃって、私も長い間教師やってますけれど、こんなの初めて。うふふ」 

 教科書類が再び詰め込まれたピカピカのランドセルをぶら下げて帰ってきた母に、当然こっぴどく叱られた。    
 「顔から火が出たわよ。お母さん、今までこれほど恥ずかしい思いをしたことなかったんだから」その後、僕が忘れ物をするたびに、母はこの逸話を披露した。

 この親にして、この子ありなのだ。納得するしかない。

 下駄箱のところに置き忘れたのかも知れない、と半泣きの息子。冬休み中ではあったけれど、運よく当直の先生に連絡がついて、さっそく母子で学校へ。

 賞状は、愚息の机の中に保管されておりました。
 二日がかりで、めでたく我が家に到着。よかった、よかった。

 賞状を手にして、息子がイの一番に言ったこと。「ねえお父さん、ここよく見て」と、文章を囲んでいる飾り罫、不死鳥みたいな鳥の尾の模様の部分を示す。
 「ここにハートの文字が隠されているんだよ」
 よく見ると確かに、絵の中に肉眼では分からぬほどの大きさで、「ハート」と記されている。賞状メーカーの遊び心か。

 「よく見つけたな」
 「〇〇君のお兄ちゃんが知ってたんだ。」
 「これはすごいぞ、息子。大発見なのだ」
 「ね、すごいでしょ。ああ賞状見つかってよかった」

 バカボンとバカボンのパパの会話みたいになってしまっていたのだが、これでいいのだ。

 真ん中の花の隣に、よく見ると「ハート」の文字が。2箇所発見。さらに花の中にハートマークの隠れキャラもありました。

2009年12月24日木曜日

レピドールのクリスマスケーキ


 クリスマスイブ。

 ケーキは毎年・田園調布「レピドール」 の17センチのデコレーション。
 家族全員ここのクリスマスケーキ、大好き。

ホワイトチョコレートなどで作られたデコレーションも美味。こちらは愚息が全部たいらげる。


 「レピドール」は2階に喫茶ルームも併設、絵本作家の葉祥明さんがよく打ち合わせ場所として指定される。
午後の喫茶ルームは、近隣のおば様方で溢れかえっていて、女性客度97パーセント。僕などは異分子である。

 こういう場所は慣れていないので、背中がむずむずしてしまう。紅茶なぞを啜りながら葉さんを待つ間、資料に目を通してもなかなか集中できず、ついきょろきょろと周りを盗み見みして、怪し度を高めたりしていた。
 赤羽の居酒屋なら大丈夫なのだけれど。

 もう7~8年になるだろうか。ちょうどクリスマス前の時期、レジのところでケーキを予約する人が後を絶たない状況を目にした。会社帰りの男性も多く、今年もお願いね、という感じで名前・電話番号などを告げていた。
 それでは、ということで僕もなんとなく一番小さいのを予約したのが最初。
 クリスマスイブの夜に、お店でケーキを受け取りぶら下げて家路に着くのは、少し照れくさくもあり、また「父ちゃん」という感じで、嬉しくもある。
 とにかくスポンジケーキ、クリームともに絶妙のコンビネーション。妻、一口食べて「おーいしーい!」と、毎年倒れそうになる。倒れそうになりながらも、8カウントで復活し、一人で2分の1をぺろり。

 
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2009年12月21日月曜日

加藤仁さんが天国へいってしまった

  ノンフィクション作家の加藤仁さんが、12月18日に亡くなった。

 「僕がモノ書いているうちはさあ、七十になっても八十になっても、こうやって月一回ぐらいは一緒に飲もうよ、つきあえよ」と言ってくれてた仁さんが。

  早すぎるよ、最後に飲んだの8月だったじゃないですか。

  次の作品を楽しみにしていたのに。恩返ししなければならないことがたくさんあったのに。早すぎますよ。

 「オイ、君はそんな顔するんじゃない」といういつもの言葉が聞こえてきた。
 「そんな顔になります。加藤さん、やっぱり早すぎる」

 葬儀の帰り、車窓からこの冬一番の美しい富士山の夕景を見る。