2011年3月4日金曜日

博多新駅で、なぜ2番じゃいけないのか理解する

 3月3日ひな祭り。ぼんぼりに灯りをつけず、早朝、出張のため僕は福岡に飛んだ。

 操縦室からの「えー、機長でございます。今日は素晴らしい天候で、あー、窓からは富士山がとてもきれいに見えます。日本アルプスの雪をいただいた山々も素晴らしい景色です。短い旅ではございますが、えー、皆様、機内で、くつろぎのひと時をおすごしください。」というアナウンスをこの日は、窓側の席でない僕はもどかしくそれを聴いたのであった(しつこいが僕は飛行機の窓からの光景が大好きなのだ)。
しかたなく座席の前のモニターから日本アルプスの雪景色を眺める

 そして、福岡空港から地下鉄で博多駅、午前10時少し前には到着。そこには僕のまるで知らない街が存在していた。

 JR博多シティ 左側がアミュプラザ、右側が阪急百貨店

3月12日の博多=鹿児島間、九州新幹線・完全開通を1週間あまり後に控え、長期間続いていた博多駅の改修工事が終了。ぴかぴかの姿を現していた。

 駅ビルには阪急百貨店とAMUプラザという二つの巨大おしゃれショッピング施設が併設されており、印象としては札幌駅に近い、というか名古屋駅や京都駅などこの10年前後にリニュアルされた、大都市のこじゃれた駅のコンセプトとほぼ同じように感じた。

 オープン初日なので当然と言えば当然であるが、平日の午前中というのに駅前は人人人であふれていた。博多と言えば天神、なのであるが今日はさすがに「天神はガランとしちょったけんねえ、、、」みたいな会話がそこここで聞かれた。


 駅ビルへの入場はそれぞれの商業施設の2箇所に規制、阪急百貨店側からの入店は30分以上かかり、
アミュプラザは4~5分程度だった。実はビルの中は連絡されていた

 屋上も面白いよ、と聞きつけ、昼飯どきに行ってみた。そこには、何が奉ってあるかわからないが「鉄道神社」なるものが存在し、参拝客でごった返していた。みなさん、小さな祠の前の賽銭箱に小銭を投げ入れ、さすが山笠博多っ子、きちんと二礼二拍手一礼している。ちょっとシュールな光景ではあった。何の神様ですかと問えば一様に、よくわからんと笑顔で首をひねる。
鉄道神社を参拝する人々

 屋上広場には、さらにミニSLが走り、ドッグランのスペースもある。土・日には子どもと犬たちがあちこちを駆けずり回り、すごいことになるだろう。

 また、屋上は展望台の役割も果たしており、多くの人が博多の街をバックに記念写真を撮っていた。あいにくこの日は天気が悪く視界不良だったが、晴れた日はきれいに博多湾が一望できるという。屋上の柵ごしに見る博多の街の迫力は、曇り空とはいえそれなりのものがあった。

 柵から、少し離れたところに、4~50センチくらいの高さの狭い舞台のようなものがあり、そこが博多駅屋上の頂上というか、標高最高地点となる。

 50センチ高くなったとしても周りの景色に変わりがあるものではないが、屋上に来た人はみんなその頂上を目指していた。 独りよがりに長居することもなく、きちんと順番を守りその最高標高地を楽しんでいた。

 人間の欲望、いや向上心とはなんとキリがないのだろう、人は1ミリでも上を目指す、やっぱりナンバー2で終わってはいけない、せっかくならナンバー1に登り詰めたくなるのだなあ、などと斜にかまえていた僕も、我慢できず列に並んでその舞台の上に登っちゃった。

 やっぱり見える景色に変わりがなかったが、なんとなく心の奥深くに抱え持つ征服感なるものが満たされ、天下をとったような気分になってしまったのであった。
頂点をきわめた人々 自然と未来に想いを馳せる表情になる
高所恐怖症の僕もここなら大丈夫
 


ひねくれゆうちゃんの赤いかさ(5)


 「うれしいな、すてきだな」

 真っ赤な布地のはしっこにかわいいピーマンとニンジンの絵がこうごに描かれた赤いかさはゆうちゃんが想像していたとおりのものでした。

 おばあちゃんから電話があった、きっかり1週間後におばあちゃんはゆうちゃんのおうちを1年ぶりに訪ねてきました。

 「ねえ、お母さん。このかさ、さして歩いてもいいでしょう」

 ゆうちゃんは“いっしょうのおねがい”という顔をして、おかあさんにそううったえます。

 「そうね、せっかくのおばあちゃんらゆうちゃんへのプレゼントだものね」

 おばあちゃんも、

「きちんとおちついてさすのよ」

と言ってくれました。

 「やったー。お母さんもおばあちゃんも大好きっ」

 ゆうちゃんは、お家の中をかさをさして、台所も居間もぐるぐると行進してまわりました。

「おうちの中ではいいと言ってませんよ」

 お母さんとおばあちゃんは同時にゆうちゃんにそういいました。

 ゆうちゃんはかたをすくめて舌を出しました。

 ゆうちゃんはその日、おばあちゃんからもらったたいせつなかさをきちんとまくらもとにおいて、いっしょにねむりました。                                      (つづく)

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