2008年5月25日日曜日

ギターとヴァイオリン、至福の時間 Kiyoshi Shomura

 日本クラシック・ギター界の第1人者、荘村清志さんのコンサート。小林美恵さん(ヴァイオリン)とのデュオ。「浜離宮朝日ホール」にて。

 コンサートタイトル「舞曲」の肩に”荘村清志還暦記念コンサート”とある。いやあ、60歳にはまるで見えない「永遠のプリンス」であります。ギター王子。  


 荘村さんの演奏を生で初めて聴いたのは20年ほど前のこと、当時は師匠ナルシソ=イエペスが開発した10弦ギターを使用していた。


 荘村さんの指がその楽曲の持つ魅力を一つも逃すまいと掘り起こしていく姿勢、そのストイックな演奏に圧倒された。 聴衆も演者の緊張感に引き込まれ、コンサート会場は、非常に高いステージのカルチュラルな空気に包まれた。

 その後、荘村さんは6弦ギターに持ち替えた。50歳になる少し前の頃だったか。
 そのころから、荘村さんの修行僧のようなストイックさはしだいに薄れていくように僕には思えた。あえて言えば、自分自身のパフォーマンスを楽しんでいるような感じ。

 とぎすまされた感性をベースにしたヒューマンなその演奏スタイルは、さらに僕らファンの心をとりこにした。と、同時に常に進化する荘村清志というアーティストの才能に感嘆し、またギターという楽器の奥深さに感心させられた。

 荘村清志の人間的な演奏に触れれば触れるほど、その「人柄」にも接したような気持ちになる。それは「やさしさ」や「向上心」などの言葉だけではあらわすことのできない、精神性の深さみたいなもの。


 荘村さんは、このところ、様々な分野のアーティストをゲストに向かえ、今日のようなデュオ・コンサートをおこなっている。楽器、国籍を越えての共演で、お互いの魅力を倍増させてしまう。それは、演者の技術の高さももちろんではあるけれども、荘村清志の人間性に因るところが大きいのではないかと思う。

 今回のパンフレットに荘村さん自身が、こんなコメントを寄せている。
「(小林さんと演奏した際)・・・演奏し終わった後、背筋を正されたような衝撃を受けた。この人と演奏していると自分が高められると思い今回の演奏会が実現した。・・・」
 60歳の大御所が、である。この一文に荘村さんの、人としての大きさを僕は感じぜずにはいられない。

コンサート後のサイン会。お疲れのはずですが、お二人とも多くのファンの方一人ひとりにていねいに接してらっしゃいました。
 小林美恵さんのヴァイオリンも素晴らしかった。そして美人。力強さとしなやかさに魅了される。
 今回のコンサートの圧巻は、このコンサートのための委託作品・権代敦彦氏作曲の「Nae Nam Khong」。ギターとヴァイオリンのコラボレートをみごとに成功させていました。初演に立ち会えてこれまた感動。
 随分とジャンルはちがうけれど僕の中では、大好きな「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の「ミルク」を髣髴とさせる名曲。至福の時を過ごさせていただきました。

 その後、コンサートをご一緒した加藤仁さんご夫妻と築地「天竹」で食事。奥様のいつもの笑顔に心が緩む。充実した1日。

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