2008年5月29日木曜日

今月読んだ本

今泉みね子さんの本。

 ドイツ在住、環境ジャーナリスト今泉みね子さんの最新刊。  今泉さんとのおつきあいはかれこれ10年ほど前からか。3冊ほど著書にかかわらせていただいた。フライブルクは当時、世界の「環境首都」として名を馳せていて、突然、「これからはなんつっても環境だよ」という、日本の地方議員とか学生とかマスメディア関係の人々が"視察"や取材と称して大勢押しかけていた。その日本人エコ野郎ども(僕も含めて)の対応を一手に引き受けていたのが、この今泉さん。

                  クルマのない生活 フライブルクより愛をこめて
白水社

 とにかく環境といえばドイツ、ドイツ、ドイツと呪文のように唱え、かの国へ行きさえすれば環境問題に対して一過言あるヒトになれると思っていたわれわれに対し、今泉女史はいつも言っていた。

 「確かにドイツ人は、市民感覚として日本人より環境に配慮のある考えを自己責任として持っていて、そこから学ぶべき制度やライフスタイルはたくさんあるけれど、問題も山積み。日本人だって、振り返ってみれば捨てたものじゃないんだから。まず、日本の良いところを見つけないと、本当の意味で環境問題をフライブルクから学ぶことはできないのよ」といわれ、目からうろこが落ちた気がしました。

 本書は彼女が生まれ育った東京本郷での昭和30年代の山の手の生活ぶりが紹介されています。
 頑固一徹ではあるけれどユーモアも忘れないまさに江戸っ子の祖父母のライフスタイルに関する話が闊達に描かれており、そこから日本人がもともと持っていた都市生活における自然との折り合いのつけ方、生態系などという言葉は意識せずに自然の循環にきちんと配慮した知恵をもっていたことなどを学ぶことができるのです。

  amazonの紹介欄には「エコに関心のある全ての人に贈る、さわやかで素敵な一冊です」とありますが、エコ野郎どももそれなりに、そうでないヒトにも十分手にとってレジへ向かう価値のある作品であります。
 自身の周辺のことを面白おかしく書きながら「ヒトの幸せってなんだったんだっけ」とほんわり考えさせてくれる本書は、ぼくにとっての「08年上半期のベストエッセイ」に決定です。

 今泉さん、どんどん腕上げていきますねえ。
 今泉みね子さんのブログも人気急上昇のようです。

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